こんにちは、行政書士の鷲見凌弥と申します!
(ホームページ:鷲見行政書士事務所(外部リンク))
突然ですが、相続について、このように思っていませんか?
- まだまだ元気だし、相続について考えるのはまだ先かなぁ
- 相続対策は気になるけど、何から始めればいいのかわからない…
裁判所書記官として、遺言無効確認や遺留分の請求といった、遺言・相続関連の訴訟の現場を見てきた中で、
「争族」化しないためにも、相続は事前の対策、つまり、元気なうちからの対策が極めて重要であると感じました。
人間同士のやりとりのため、どれだけ事前に対策をしても争い(弁護士を介しての交渉や、裁判所での調停や訴訟など)に至ってしまうことはあるかと思います。
しかし、
感情の面でも、
お金の面でも、
手間の面でも、
争いになる可能性を可能な限り下げておくに越したことはありません。
そこで、この記事では、
家族を「争族」にしないために、元気なうちからやっておくべき相続対策を5つのステップで解説していきます。
ステップ① 相続財産の洗い出し
まずは、財産について、「何が、どこに、どれだけあるか」をリストアップします。
「何が、どこに、どれだけあるか」によって、相談すべき専門家も変わり得ますし、ここを押さえておかなければいざ相続が発生した時に「思ったよりも財産があった・なかった」と揉めるポイントにもなりかねません。
また、あとのステップで出てくる「遺言書の作成」のためにも「何が、どこに、どれだけあるか」把握する必要があります。
そのため、相続財産を「見える化」することになります。
ここで、相続財産というと、預貯金や不動産を思い浮かべがちですが、実際には以下のように多岐にわたります。
- 現金・預貯金・有価証券
- 不動産(土地・建物)
- 自動車・貴金属
- 債務(借金・連帯保証)
- 保険(保険金請求権)
- デジタル遺産(ネット銀行、暗号資産、サブスク等) …など
いきなりたくさん並べられてもわからない!という方もいらっしゃると思います。
そのような場合には、相続財産の調査について専門家のサポートを受けることもできます。
どのような専門家に相談すれば良いかの考え方は、別の記事で解説しています。
【遺言・相続】弁護士に頼むべき?それとも司法書士?行政書士?元裁判所書記官が教える「相談先の考え方2選」
ここではひとことで、「不動産がありそうであれば司法書士」、「不動産がなさそうであれば行政書士」、「相続財産が多く、相続税対策も必要そうであれば税理士」と簡単な説明に留めておきます。(詳細はぜひ解説記事をご覧ください。)
相続財産に関して、近年では、デジタル遺産の存在を家族が把握できていないケースも見られます。
アカウントの存在やID・パスワードを「エンディングノート」に記すなどして、相続財産として漏らさないようにする工夫も重要です。
また、不動産に関しては、「所有不動産記録証明制度」という制度が2026年2月2日から始まる予定です。
2025年現在では不動産の名義(登記名義)をまとめて調べる方法はありませんが、この制度が始まれば登記名義を一括で調べることが可能になります。
参考:相続登記の申請義務化について-所有不動産記録証明制度(令和8年2月2日施行)(法務省ホームページ)
ステップ② 相続人の洗い出し
ステップ①の相続財産と並行して、誰が相続人となるのか(推定相続人)についても確認していきます。
「家族構成はわかっている」と思っていても、
- 前婚の子
- 認知された子
- 養子
など、家族が把握していない相続人が後から判明するケースもあるため、事前に戸籍を出生から最新まで遡って、相続人を漏れなく把握することが大切です。
また、逆に、内縁の夫・妻(法律上の婚姻手続をしていない夫・妻)などは相続人になりません。
相続人にならない人についても把握しておき、その人にも財産を残したい場合は「遺言書の作成」のステップで「遺贈」をするようにしましょう。
このステップで、相続人になる人・ならない人を確認しておくことで、実際に相続が発生した後に、
- 全然知らない人が相続人になっていた!
- 内縁の夫婦として役割分担して専業主婦(主夫)をしていたのに、1円も受け取れないなんて…
これからの生活、一体どうすれば…
といったトラブルが発生するのを防いだり、事前に手を打ったりすることができます。
このような相続人に調査についても、ステップ①と同様、専門家のサポートを受けることができます。
【遺言・相続】弁護士に頼むべき?それとも司法書士?行政書士?元裁判所書記官が教える「相談先の考え方2選」
自分で相続人を調査する場合でも、専門家に依頼する場合でも、押さえておきたい用語があります。
それは「法定相続人」、「法定相続分」、「遺留分」という用語です。
これらの用語の詳細に関しては、別途、解説記事を作成予定ですので、ここでは簡単な説明にとどめますが、
法定相続人とは、法律(民法)で定められた、亡くなった方の財産を引き継ぐ権利がある人のことです。配偶者(妻・夫)は常に相続人となり、配偶者以外は①子、②直系尊属(父母、祖父母など)、③兄弟姉妹の順で相続人となります。
法定相続分とは、それぞれの法定相続人が受け取る取り分の法律上の基準のことです。ただし、法定相続分はあくまで話し合いがまとまらないときの基準であり、「遺言」の内容や、相続人全員で合意した「遺産分割協議」の内容が優先します。
遺留分とは、一定の相続人に最低限保障されている、遺産の受け取り枠のことです。たとえ遺言書に「特定の誰かに全財産を譲る」という内容が書かれていても、配偶者や子などの相続人は、この遺留分の枠内のお金を請求する(遺留分侵害額請求)ことができます(なお、兄弟姉妹には遺留分はありません。)。
遺留分は遺言の内容にかかわらず主張できるので、「ステップ③ 方針を話し合う」、「ステップ④ 遺言書の作成」では、この遺留分の存在も踏まえておくことが重要です。
ステップ③ 方針の話し合い
ステップ①・②で、相続財産、相続人、受遺者(遺贈で財産を受け取る人)を確認することができました。
ステップ③では、それらを踏まえて、相続の方針について本人、相続人、受遺者で話し合いましょう。
全員で、納得できる方針を共有しておくことが、「争族」化を防ぐために最も重要です。
本人が元気なのに亡くなったときの具体的な話をするのは気が引ける…という方もいらっしゃると思いますし、その気持ちもとてもよくわかるのですが、
冒頭でもお話ししたとおり、相続は元気なうちから対策をしておくことが極めて重要です。
事前に話し合っておけば防げたかもしれないのに、それをしなかったばかりに家族で揉めて、気持ちも時間もお金も消耗して、間に深い溝ができてしまった…となれば、それは亡くなってしまった本人にとっても後悔してしまう出来事なのではないでしょうか。
元気なうちから亡くなったときの話をしたくない!と思っている方でも、ご家族からの話ではなく、専門家からの話であれば受け入れてくれる場合もあるかもしれません。
専門家なしでこのステップまで進んだ方も、このような場合であれば、このステップから専門家に入ってもらうことも検討してみてください。
さて、全員で納得できる方針を共有しておくことの重要性の説明はここまでにして、
このステップでは、「誰に、何を、どのように分けるのか」を話し合うことがメインになります。
また、「全員の納得」に向けて「なぜそう分けるのか」についても話しておくことが重要です。
兄弟姉妹の間で理由も話されずに差を作られると不満が出ることは想像しやすいと思いますが、
- 同居しているから長男には家と土地を、遠方にいる次男にはその分の預貯金を
- 長女には学費を多く出したから、今回は次女を多めに
といった「なぜ」がわかると納得できる場合があることも想像しやすいと思います。
(なお、「なぜ」の内容を、「付言事項」として遺言書にも記載することができます。)
また、ここで「どのように分けるのか」に関連して、「相続土地国庫帰属制度」を紹介します。
相続では、相続人が全員遠方に住んでいて、管理すれば費用がかかりすぎてしまうといった土地(いわゆる「負動産」の1つ)が生じ、相続人が誰も受け取りたがらない、管理したがらないという問題が発生する可能性があります。
そういった問題の対応策の1つになりうるのが「相続土地国庫帰属制度」です。
この制度は、2023年4月23日から始まった、相続人が「相続」した「土地」を手放せる(「国庫」に「帰属」させられる)という制度です。
相続した土地を手放せるので、負動産化してしまった土地を手放す方法の1つになりうるというわけです。
ただし、この制度には「費用がかかる」、「土地が制度の利用要件を満たさないことがある」といった側面もあります。
そのため、制度の利用を検討する際は、司法書士など負動産への対応方法に詳しい専門家に相談することをお勧めします。
また、争族化防止の話からは少し逸れる話も含むので簡単な言及にとどめますが、
この「方針を話し合う」のステップのタイミングで、相続の内容だけでなく今後の手続の進め方の方針などについても話し合っておくと良いです。
具体例をいくつか挙げると、次のような事項です。
- 今後、判断能力に不安が生じた場合どうするか?→法定後見制度・任意後見制度などの事前検討・相談、不安が生じる前の遺言書作成
- 相続発生後の手続を誰に進めてもらうか?→遺言執行者・死後事務委任契約などの検討・相談
- 相続発生後の銀行口座凍結にどう備えるか?→生前贈与・金融機関の代理人制度などの検討・相談
このステップにおいても、今までのステップと同様、専門家のサポートを受けることができます。
【遺言・相続】弁護士に頼むべき?それとも司法書士?行政書士?元裁判所書記官が教える「相談先の考え方2選」
このステップでの相談内容は、不動産と税金が絡む相談というような、どうしても複数の専門家の担当分野にまたがるものもあるかと思います。
その場合でも、自分の担当外の分野についてはその分野の専門家の紹介まで行う、という専門家も多くいるため、まずはどこか一つの専門家に相談すると良いと思います。
(紹介先ではなく、別分野の専門家を自分で選んで相談するということももちろん可能です。)
ステップ④ 遺言書の作成
このステップでは、ステップ①〜③の内容を踏まえて、「遺言書」を作成しましょう。
遺言書とは、相続財産についての「誰に、何を、どのように分けるのか」という意向に、法的な効力を持たせることができる書面です。
他にも、遺言書には、遺言の内容を誰に実現してもらうか(遺言執行者の指定)や、
法的な効力はありませんが、「なぜそう分けるのか」といった理由や家族へのメッセージなど(付言事項)を記載することもできます。
遺言は、方式が法律で定められており、それに沿ったものでなければ有効な遺言とはなりません。
遺言の方式に関しては、別途、解説記事を作成予定ですが、
代表的な方式とそれぞれの特徴の一部としては、次のとおりです。
- 自筆証書遺言(本人が自筆で遺言書を作成する方式。相続発生後に検認手続が必要。作成費用は安価。)
- 公正証書遺言(公証人が遺言書を作成する方式。検認手続が不要。作成に費用がかかる。)
また、自筆証書遺言を法務局に保管できる「遺言書保管制度」というものがあります。
遺言書1通につき、3900円の手数料はかかりますが、「自筆証書遺言の形式について外形的なチェックがなされる」、「法務局で保管されるため偽造・変造されにくい」、「検認手続が不要になる」などのメリットがあります。
なお、この制度の利用申請は遺言者本人が法務局まで出向く必要があり、郵送による申請や代理人による申請は認められていません。また、遺言の「内容の妥当性」まではチェックされない点にも注意が必要です。
遺言書の作成についても、専門家のサポートを受けることができます。
【遺言・相続】弁護士に頼むべき?それとも司法書士?行政書士?元裁判所書記官が教える「相談先の考え方2選」
特に自筆証書遺言で法務局保管をしない場合、形式上の不備を理由として、遺言書が無効とされてしまうケースがあります。
一生懸命作成した遺言書を無効と判断されてしまった…という事態を避けるために、専門家のサポートを受けながら遺言書を作成することは有効といえます。
鷲見行政書士事務所では、相続・遺言に関するご相談も受け付けております。
詳細は事務所ホームページ(外部リンク)をご確認ください。
ステップ⑤ 必要に応じた見直し
最後のステップは、相続の方針や遺言書の内容の必要に応じた見直しです。
ここまでのステップで、関係者全員で財産をどうしていくかについて話し合い、遺言書というかたちでも残せているので、「争族」化する可能性はある程度抑えられているといえます。
しかし、
- 新たに孫が生まれた
- 持っていた不動産を売却した
というように、家族や財産の状況は変化していくものです。
そのため、そのような変化に合わせて、方針や遺言書の内容を見直す必要がある場合もあります。
見直しをする場合、ステップ③のような「方針」については話し合いの場を再び設けることで、見直しができます。
また、「遺言書」についても、遺言書作成の方式に従って撤回することができます。この場合、遺言書を他の方式の遺言書で撤回することもできます。
例)先にしていた自筆証書遺言を、後から行う公正証書遺言で撤回する→可能
さらに、前の遺言書の内容に抵触する遺言書を新たに作成した場合など、過去の遺言を撤回したとみなされる場合もあります。
相続の方針や遺言書の内容を見直す場合、このステップまでに相談した専門家に再度相談することをお勧めします。
まとめ
相続は、誰にでも必ず訪れるものです。
しかし、事前の準備があるかどうかで、結果は大きく変わります。
この記事では、家族を「争族」にしないために、
- 相続財産の洗い出し
- 相続人の洗い出し
- 方針の話し合い
- 遺言書の作成
- 必要に応じた見直し
という5つのステップを解説してきました。

この記事が、相続対策に悩んでおられる方の一助となれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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